「ゲゲゲの鬼太郎①」水木しげる 中公文庫

小学校低学年の私は同級生の家で、アニメを観ていた。

記憶によれば、ねずみ男に騙されて鬼太郎が海のバケモノになってしまうという筋書きだったと思う。

何倍もの大きさにふくれあがり、汚い緑色になり、声が出せなくなった鬼太郎。

小舟に乗ったともだちに、「たすけて」と言いたいのに、伝わらずに攻撃される。

そのかなしみと声を出せないくるしさと気味のわるさで、吐き気をもよおして家へ帰った。

その吐き気と気持ち悪さをよく覚えている。

 

1話目は「墓場鬼太郎」とほぼ同じであり、設定は確固としている。

しかし2話目からは悪い妖怪(もしくは人間)をこらしめる鬼太郎の活躍が描かれる。

妖怪退治をひきうけ、貧乏人からお金はもらえないとお腹をへらし、お金持ちから家を差し上げると言われると「ぼく家があると日本中を旅行できないから小児マヒの子どもの家にでもしてくれ」と答える。強いようでいて、妖怪によく食べられてしまうしかまぼこにされてあちこちに売られたりしているが、話の終わりには妖怪を倒して飄々と歩いている鬼太郎。

ねずみ男は妖怪と人間のハーフで、不潔で金に汚く、たいがい儲け話の為に鬼太郎を騙し、悪い妖怪の手先になるがその為にひどい目にあっている。が、やはり次の話になれば飄々と歩いている。

その人間だろうが妖怪だろうが、生きていようが死んでいようがというような飄々さに魅力を感じる。