「BANANA FISH ANOTHER STORY」吉田秋生 小学館文庫
少女まんが家にしてコンクリートの廃墟を描くのが得意とのこと。
大雑把に言ってしまえば、NYのギャング・ストーリー。圧倒的な筋運びの面白さ。
主役のアッシュの魅力。(灰色がかった金髪と怒ると赤い色に見える、悪魔の緑色の瞳。IQ180以上の頭脳。鍛えられた戦闘能力)
このふたつだけでも、「BANANA FISH」文庫で11冊を読ませるには十分だっただろう。それに加えて、台詞のスマートさと可愛らしいユーモアがちりばめられている。
ただ、私がいちばんぐっとくるのは、切なさを感じる部分だ。
本編が終わった7年後を描いた「光の庭 THE GARDEN WITH HOLY LIGHT」の後半部分。ケープ・コッドを訪れた英二たち。古い一軒家の玄関テラスの犬。女の子に降り注ぐ太陽の光。郷愁の中の白いひかり、清冽な空気。
一枚の写真。NYの窓際に座る眠るような祈るようなアッシュの横顔。
喉の奥にぐっとくる切なさと、恋愛ではないからこその深くて何かに繋がるような愛を感じる。