「アドルフに告ぐ」全4巻 手塚治虫 文春文庫

ヒットラー出生の秘密文書を巡る3人のアドルフの戦いを、1936年から1983年に渡って描いている。

「総合小説」という言葉があるが、政治・戦争を、時代の匂い・町の雰囲気を、殺人・狂気・正義・欲望・愛情・希望の群像劇を、どうしたらひっくるめて物語をつくり出せるのだろうか。

戦争を知らない私は、残酷さにモザイクをかけられた情報に囲まれて、甘っちょろく善良に生きている。

もちろん幼い頃から教育をされれば、民族を差別し、大勢を殺し、兵隊となって命を投げ出していたかもしれない。人間の思想なんてそんな薄っぺらい、川に流れる葉っぱのようなものなのだ。

ただ、どんな状況でも、生きようとする意思、生まれる命はある。

現代で、戦争を知ること(人間の残虐性)、文化を大事にすること(経済に左右されないこと)、人類に食料とエネルギーを分け与える方法を考えることを考えながら、ご飯と家族を大事にして生きていく。