「職人ワザ!」いとうせいこう 新潮文庫

この文庫には、土屋鞄製造所のブックカバーをつけていた。(紀伊國屋書店で配られたものらしい)

木のテーブルに並べられた鞄職人の方の道具が並べられた写真。

本書は三十代後半に浅草へ移り住んだ著者が、町の仕事士たちにものづくりの話を聞くという、雑誌の連載をまとめたものである。

 

お気に入りは手ぬぐい屋さん、オーダーメイドのテーラー、パイプ屋さん、鰻屋さんなど。

もちろん、プロフェッショナルであり、ものを作るという仕事の内容を知ることは興味深いのだけれど、わくわくするのは、町の情景を嗅ぎ取れることだ。

手ぬぐいと扇子を仕舞って、着物を着こなして、お店に入れば職人と話し込む。

職人は、昔はやんちゃだったり、演劇にかぶれたり、禅寺で修行したりしているが、この道に入ってからは、一心により良いものを作ることに突き進んできた。都会ならではのデザインに関する勘や、この町ならではの粋を吹き込んで。

いかに売れるかではなく、いかに良いものを作れるかということを続けているところが12人に共通している。

 

そしてその職人たちも、お店やお客や祭りや、町を歩くことを通して、浅草にとけ込んでゆく。