水に溶ける
車や電車に乗っていて、遠くに海がちらっと見えたときの喜びは、小さな頃から変わらない。
夏でも冬でも、気の進まない旅であったとしても。
どんなに小さな面積でも、見えなくなるまで真剣に見つめている。
容量の差か、湖や川だと、少し興奮度は下がるものの嬉しく見つめる。
プールやお風呂や顔を洗うときも、その幸福は含まれている。
海を見ているとき、水に触れているとき、自我の輪郭は溶けていく。
実際の現象とは異なるだろうが、「海の藻屑になる」という言葉から連想されるイメージは、なんだかとても落ち着くものだ。