歌う

よく歌っていた。外でも家でも。

身体中に響かせて、大きな声で。

あまり特徴のない声だし、自分に酔っていたし、不快に感じたひともいただろう。

それでも激情といえるほどの非日常の感情を身体を使って発露することが必要だった。

そのうちに自分の歌ができるだろうと思っていた。緑の中で太鼓を叩いて、リズムができていくように。

窓のない個室で、青い光の中で、酔っぱらって歌うのではなく。

鼻歌や祈りや調和を、空気に溶けるように、風が起きるように、歌いたい。