おばあさんとおばさん

なりたいおばあさんのイメージは昔からはっきりしていた。

大きな口を開けて、たくさん笑う。小柄でふくよかで足が小さい。髪はひっつめで、カラフルな布を巻くこともある。はっきりした色のワンピースを着ている。小さな小屋のような家に住んでいる。洗濯物は外に干す。たまに辛口。

昔のヨーロッパのおばあさんの写真やレニー・ハート(年齢ではなく、豪快に笑うイメージとして)さんや、マドンナが食卓にいる広告写真(イタリアのマンマ的に撮影されたそう)や、いじわるばあさんなどに影響されている。

どんなおばさんになりたいかは考えたことがなかった。

いま憧れるのはお坊さんや修道女のような人だ。真っ白な肌に黒い髪、ベリーショートも素敵だ。禁欲的な服装をし、まっすぐに背筋をのばして、色素の薄い目は遠くを見ている。厳しい修行を積んでいるため、世界を受け入れる容量が広い。

いまの生活にたいして自己嫌悪がひどいのだろう、自分の気に入らないところを削ぎ落して、うしろ暗い部分のない状態で世界と対峙したいのだ。

そしておばあさんになった暁には、社会の中での存在感は小さなものでいいのだから、どこか目立たない場所にいる、でも幸福そうに生きていると思われればそれだけでいい。