両親

家族仲が良かったわけではない。

父親は昔ながらの一番風呂と上座にこだわり、ひどい癇癪持ちで、嫌味を言わずにはいられない人だった。自分のことは秘密主義で他人の価値観は認められなかった。

しかしその自分の価値観と世界を作り上げるパワーで、事業を興して成功させ、家族を養って、家を何軒か建て、見事な庭を作り、犬をしつけ、今もITや趣味に邁進している。

母親は目立たないことが一番の人で、逸脱していないかをとても気にしていた。着飾ることを嫌った。あまり感情の上下がなく、褒めることが下手だった。

料理は不得意だったが手先は器用で、日本画やピアノを習っていた。いまもクラシックコンサートに行くことが一番の楽しみらしい。

わたしは理想の子供像を押し付けられ、自分の価値観は否定され、自己肯定感が低いままに大人になった。

しかし両親に一番感謝していることは、善良さを教えてくれたこと。きちんと働くこと、弱者に優しくすること、誰も見てなくても頑張ること、日々努力すること。言葉にして教えてくれた訳ではなく、おそらくそこの部分が両親の生き方の根本だったのだろう。

わたしが人に教育し、アドバイスし、誘導する立場になっても、人に伝わるのはその部分だけなのかもしれない。