「女神」

画家の石井一男についての本を読んだ。

若い頃に絵を描いていたが空白の期間を経て、46歳からまた描き始めた。

住まいは神戸の棟割住宅、六畳の部屋をアトリエにして、新聞配達を続けながら。

専業画家となってもその生活はほぼ変わらない。

朝6時に起床、昨夜の残り物を朝食としてとり、布団を干す。

散歩をしてから帰宅して絵を描く。

商店街で総菜を買い、昼食後に再び絵を描く。ラジオかクラシックをかける。

夕方になると銭湯へ行き夕食後にも作業を続ける。

9時過ぎには寝床に入る。クラシックや落語を聴くときもある。

雑音の少ない人生と清潔な生活、穏やかで嘘のない人柄、一心に生み出される小さな女神像がだんだんと人の手にわたってゆく。