万華鏡

万華鏡をひとつ、持っている。

ずいぶん前に赤坂のお店で購入したものだ。

ガラスとアイアンでできていて、赤いガラスの長方体の端に小さめの円筒形が曲面を接していて、円筒形ををつらぬく金色の棒をつまんで回す仕様になっている。

三角の覗き穴から見ると、ベルベットの様な赤とペールグリーン、黒や紫のアクセントがきらきらと華やかにゆっくり動いていく。

手元にはないが、キットを制作したこともある。

筒に和紙を張り、シャーレ状の入れ物に鉱石やビーズを入れ、三面の鏡を内側にして隙間なく繋げるところに苦労した。

万華鏡展に行ったこともある。頭よりも大きい巨大なものや、あちこちに部品をはめながら見るものや、ぴかぴか光るものがあった。端にあった、小さな銀色の馬車や靴や魚を模したオブジェが鎖でつながれていて、ひとつひとつが万華鏡になっているものに惹かれた。

おそらく最初に触れたのは赤い和紙を貼った郷土玩具だと思うが、最初に覗いたときから変わることなく、万華鏡には異国情緒というような、なにか自分から遠くて近寄りがたい、どちらかといえば居心地が悪いのに、その高貴さに憧れてしまうような感情を覚える。

国立にあった羅生門という喫茶店に入ったときのような。

わたしの家の窓際にぽつんと置いてある万華鏡も、ほこりをはらうときもたまに回しながら覗くときも、いつもいつまでも遠い存在のままだ。