遠くへ

迷子の呼び出し放送の仕事をしたことがある。

こどもや親が申告する場合が多かったが、スタッフや他の人が連れてきたり、自分が発見することもあった。

泣いていたり、しょんぼりしているこどもに話しかけ、手を握り、背中をたたいて椅子に座らせる。

彼らはわたしを信頼に値する人間か判断し、名前と年齢をつたえ、迎えにきた人物が誰かを判断するのだ。

家族のもとへ向かい、甘えるためや怒りのためにさらに泣くこどもを見ながら、いつも親とはぐれたかった頃の自分を思う。

どんどん遠くへ行けよ、と思う。