2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

石鹸

幼い頃、家に帰って手を洗ったあと、ふと手を見ると爪に白いかけらが付いていた。わたしは、あ、バターだと思いぺろっと舐めた。口の中に石鹸の味が広がって、無くならない。パニックになり、泣きながら母親のところに行ったことを覚えている。母親は大した…

筆記用具

書く道具にこだわりはない。 夫が職場から持ち帰ったボールペン、郵便局で買ったレターセットについていたハイジのボールペン、お笑い芸人のキャラクター付きのシャープペンシルなどが、机のペン立てに刺さっている。 父親にもらった青と金の上等なシャープ…

ガーリックスープ

とても寒く暗い夜だった。道路の脇にはまだ雪が残っていた。 コートのフードを被って、あまり顔を動かさないようにしていたので、視界が狭く余計に暗く感じたのかもしれない。 その中にぽつんと、オレンジがかった赤のちょうちんが見えた。ちょうちんには地…

長靴

幼い頃に住んでいたところは、たまに雪が積もった。 そのときは内側にボアが付いていて、底がスパイクになっているブーツを履いた。ちゃちなピンク色だった。だんだんとうす汚れて悲しかった。 雨の日の長靴は赤色だった。ピンク色のカッパを着るので派手す…

音楽

chara 話して尊いその未来のことを byork hyperballad massiveattack teardrop zero7 somersault

薬味

父は家事をしない方だったが、夕食が湯豆腐だったときは毎回〆の雑炊を作っていた。正確にいえば材料を用意していたのは母で、父は頃合いをみて立ち上がり、カセットコンロの上の土鍋に冷やごはんを入れ、おろし生姜と葱をたっぷり入れ、蓋をするのだった。…

言葉づかい

言葉づかいに関して、すぐ影響されるほうだ。 関西弁のドラマを観れば「ほんまや」と言うし、若者と話せば「やばみ」と言うし、長期の旅行に行けばすぐイントネーションが変わってしまう。 あまり考えずに口に出てしまう部分、相づちや感嘆や語尾の部分に影…

結婚式

晴れやかな空の下、白いドレスとタキシードの二人。 きちんと出会ってきちんと結婚し、きちんと世間にご挨拶。 二人も両親も友人も、全員を幸福にする儀式。 もちろんわたしも幸福になり涙ぐんでしまう。 でも、招待状が届いたそのときから、どこかに窮屈で…