薬味

父は家事をしない方だったが、夕食が湯豆腐だったときは毎回〆の雑炊を作っていた。正確にいえば材料を用意していたのは母で、父は頃合いをみて立ち上がり、カセットコンロの上の土鍋に冷やごはんを入れ、おろし生姜と葱をたっぷり入れ、蓋をするのだった。ぐつぐつ煮えたら、卵とポン酢しょうゆをまわしかけてできあがり。生姜が辛くてポン酢がしょっぱくて、美味しかった。

知り合いがご馳走してくれたインド料理屋で、タンドリーチキンの付け合わせとしてパクチーのソースが小皿に載せられてついてきた。緑の香りが爽やかでヨーグルトのような酸味と大蒜の塩気が美味しくてびっくりした。

街の中の物産展で恋人が山形のだしを買ってくれた。一見胡瓜の細かい角切りにしか見えないのに、ご飯にかけて口に入れたら、昆布の旨みと茗荷の苦みと酸っぱい味付けが絶妙だった。

挽きたての胡椒、茗荷チャンプルー、生バジル…

ついついバランスを壊すほど足してしまう。

旬の材料と薬味があれば充分だと思っている。