ひとつめの小学校

地方都市の山沿いだった。

となりの町まで小さな川や団地をこえて歩いていった。

寺子屋までさかのぼることができる、創立100年をこえる小学校だった。

二宮金次郎の像があった。(夜に目が光るという噂)

音楽室は古いベルベットの匂い。(壁のベートーベンは血の涙を流すという噂)

廊下は緑色だったが、職員室の前だけ赤かった。(階段の段数が変わるという噂)

冬にソリ滑りができる小さな崖があった。

校庭の砂は日光に当たるときらきらしていた。透明な粒だけをよく集めた。

ラソン大会や運動会やトイレや給食や通学路の変わった人や集団心理や同調圧力やたくさんの試練があった。

ふたりだけ友達ができた。

たくさん本を読んだ。

駐車場を走るシカを見た。