化粧
はじめて化粧をしたときの感情は、けっして楽しいものではなかった。
不健全な年頃だった。
頬のうぶ毛も、まるい輪郭も、濃い眉毛も、重たい瞼も、目の下のくまも、気に入らなかった。
友達に仲間外れにされないように、馬鹿にされないように必死だった。
うす紫色のマニキュア。
べたべたした透明のリップグロス。
オレンジと白のアイシャドウ。
ちっとも似合ってなかった。
そして化粧自体をきらいになった。
今、インターネットで女性たちの化粧や化粧品についての書き込みを見るのがとても楽しい。
新製品の美しさやそれぞれに合った色を発見する方法や作法やあれやこれやを語り合っている。
その純粋な好きという発露とその的確さに感嘆する。
かわりのきかない顔を受け入れて、口紅や香水を愛でて、楽しむだけでよかったのだ。