推理小説

初めて推理小説を読んだのは、小学校の図書室にあった怪盗ルパン全集(ポプラ社)だと思う。

ジャンルは冒険小説にあたるのかもしれないが、この流れでシャーロック・ホームズを読み、同じ作者の同じ登場人物が登場するシリーズを最初から順番に読むという楽しみを覚えたきっかけなので、わたしの中でだけ推理小説に分類されている。

生真面目な児童文学ばかりに触れていたわたしは、成長しきった登場人物、話の運びのスピード、その巻のみで完結する恋愛に驚いた。その分ぐんぐん読み進める快感もあった。

その後間があいて、大学に入学し一人暮らしを始めた頃、好きなように寝たり寝なかったり食べたり食べなかったりする中で推理小説を読み漁るようになった。特に日本の新作を集中して読んだのがこの頃だ。短いものも分厚いものも好き嫌いもせずによく読んだ。百人一首や昔話や宗教や出てくる知識を書き写したり、登場人物を思い描いたり、作者について調べたりしながらも、ひたすらに量を読んだ。スナック菓子のようだと思ったことがある。逃避であり依存であることは明らかだ。

いまも推理小説はよく読む。海外の古典ミステリーを選んで、鞄の中に入れて待ち時間に少しずつ読み進めることが多い。

アガサ・クリスティのように、仕掛けがしっかりしつつも、人物造形や村の情景が書きこまれていて会話のセンスが素敵なものがベストだけれど、人がコマのように並び替えられているものもふむふむと読み進める。

わたしの人生に全く必要のない殺人事件に没頭できることは安心で幸福な時間なのだ。