電話

スマートフォンを持っていない。

持っている人にとって、電話とはどのような存在なのだろうかと考える。

四六時中触っていて、いつも持っているもの。息をするように滑らかに、LINEやゲームやネット検索をしているもの。

その中の機能の一部に電話がある。

ほんとうに緊急だったり、職場だったりごく僅かな使用頻度の、縁遠い存在だろうか。

わたしにとっても、身近ではなくどちらかといえば苦手なほうだ。

用件を伝える短いものを除けば、家族からの生存確認だったり合否連絡だったり勧誘だったり、緊張感を伴うものが多い。

それでもなぜか、ロマンチックなイメージが電話という単語にはある。

天井の高い、観葉植物のある部屋で、深夜か雨の日に電話を待っている、というような。

四六時中触っているものではないのに、部屋のすみで存在感を放っている。

若い恋人たちには、電話はコミュニケーションツールではないかもしれない。

たとえばLINEの頻度の差など、他者に幻想を抱くがゆえに際立つずれはあると思う。

物語に華を添えるような、新たなロマンチックな場面があるのだろうか。